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平岡式内視鏡手術とは
お腹を切らない・再発の心配がない・癌を見落とさない・水中毒がおきない
新しい内視鏡手術が開発されました
この新しい内視鏡手術は、最近開発された生理食塩水を灌流しながら行うことができる切除鏡(写真1)を尿道内に挿入し、水中での操作になります。従来の内視鏡手術では電解質を含まない液で潅流するために、この灌流液が血管内に吸収されると、合併症の一つである低ナトリウム血症など水中毒の原因となっていました。この新しいシステムでは水中毒は発生せず、安全です。平岡が開発した前立腺剥離子(1983年)を装着して、ミカンの皮(外腺)から実(肥大腺腫)をはがすような剥離操作で肥大腺腫を剥離します(図1、2)。剥離された後、皮から実を浮かした状態で、ミカンの実の部分を切除する。または、モーセレーターという器械で細切・吸引する(図3)ことで、肥大腺腫を安全に完全摘出することができます。治療成績は術後の前立腺の体積(表1)と再手術率(表2)を比べてみると明らかで、この術式だけが正常の前立腺の大きさに回復(縮小)していること、また、切り残しによる再発を一例も経験していないことからも、最も根治性の高い術式であることがわかります。
前立腺切除鏡
写真1
写真2
写真3
【表1】各種術式の術後前立腺体積と根治性(正常成人前立腺体積は10-12cm3)
術式 | 術後の前立腺体積の平均値(cm3) |
---|---|
TURP | 27.02 |
HoLEP(ホルミウムレーザー) | 27.58 |
PVP(KTPレーザー) | 31 |
平岡式内視鏡手術 | 9.71 |
他の術式との比較
従来式内視鏡手術では肥大腺腫(ミカンの実)と外腺(ミカンの皮)とは現実には同じ前立腺腺組織なので両者の識別が不可能です。安全な手術を行うには通常は腺腫の1/3以上を切り残すことになるので(表3)、その結果、再発率が高く、2度目の再手術を行う頻度が高い(18%)という欠点があります(表2)。平岡式内視鏡手術は2000例以上の経験がありますが、切り残しによる再手術はありません。
【表2】各種術式と再手術率
術式 | 再手術率 |
---|---|
平岡式内視鏡手術 | 0% |
TURP | 18% |
開腹法 | 4% |
【表3】従来式内視鏡手術(TURP法)による切り残し量
1.TURP法による切除重量 | 平均9.8g |
TURP法の切り残し量 (TURP法後、平岡式内視鏡手術での追加切除量) |
平均10.2g |
合計切除質量(1+2) | 平均20.1g |
前立腺偶発癌
前立腺肥大症の手術で摘出した組織の中から、偶然発見された癌を前立腺偶発癌と言います。
早期癌の多くは外腺(ミカンの皮の部分)から発生します。肥大症は内腺(ミカンの実)の病気なので、肥大症の手術だけでは癌が見落とされる可能性があります。
前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAが高く、前立腺癌が強く疑われる人に対しては、私達は肥大症の手術開始前に、前立腺針生検を行い、その後、内視鏡手術を行うことで、癌の見落としを少なくすることにしています。
PSAが高くて、癌を心配され、前立腺生検を行っても癌が検出されなかった方には、生検と完全切除する内視鏡手術のセットもお勧めです。
平岡式手術で完全摘出できると、術後PSAは1.0以下の正常値に下がります。
術後にPSAが1以下に下がると癌は存在しないと考えられます。
もし、術後に、PSAが1.5以下に下がらないとか、1.5以上上昇してきた場合は、前立腺癌が存在する可能性があると考えられ、この場合は必要なら針生検を行います。
平岡式内視鏡手術の特徴
1.
完全切除により再発しない
2.
輸血必要としない
3.
大きい肥大症でも安全に切除できる。開腹手術を勧められている大きい肥大症の方には朗報です。
4.
癌が疑わしい人には前立腺針生検を同時に行うことで癌の見落としが少なくなります。 肥大症による排尿障害があって、かつ、PSAが高く、癌が心配で、生検しても癌が見つからなかった人にもお勧めです。
平岡式内視鏡手術を受けた患者の移住地分布
日本医科大学多摩永山病院在籍中に全国47都道府県すべてから来院して、手術を受けられております。