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前立腺癌について

前立腺癌の発病率

前立腺癌の発病率は、人種差や食生活など環境因子によって大きな差があります。
欧米諸国に多く、特に米国の黒人にもっとも多い。米国では前立腺癌が男性の癌発病率の第一位となり、男性の5人に2人の割合で前立腺癌が発生しているほど多い。
昔は前立腺癌の発病率が低かった日本でも近年、前立腺癌の増加は著しく、過去30年間で男性の胃がんの死亡率が1.5倍増えているのに比べ、前立腺癌は9倍以上にも増加します。

【図】肥大症と癌の発生部位の違い

【図】アメリカ男子における癌の部位発症率

順位 部位 発生率
1 前立腺 43%
2 13%
3 大腸 8%

前立腺癌の発生部位

前立腺肥大症は前立腺内側の内腺にできた良性の腫瘍です。前立腺癌は悪性腫瘍で、肥大症とは別の病気ですが、必ず前立腺肥大症を合併しております。従って、前立腺癌も肥大症を合併するために尿道が圧迫、閉塞され、排尿障害を生じますので、肥大症と癌とは症状ではまったく同じで区別がつけられないのです。前立腺癌は肥大症と異なり、主に前立腺外側の外腺部分に悪性腫瘍として発生することが肥大症との違いです。

前立腺癌の症状

初期では肥大症を合併しているゆえに、症状は肥大症と同じで、排尿困難、頻尿、血尿、尿閉、尿線細小、尿失禁、残尿感などです。進行し骨転移をきたすと腰痛、下肢の疼痛、会陰部の疼痛など癌特有の症状が出てきます。

前立腺癌の検査方法

(1)直腸診

肛門の中に指を挿入し、前立腺を触診します。
前立腺癌は癌の部分が硬く触れるのが特徴です。
一方、肥大症は全体が軟らかく触れるので両者を触診で区別することができます。

(2)血液検査

採血して前立腺癌の腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)を測定します。正常値はタンデム法では4以下です。10以上だと前立腺癌の疑いが50%以上と非常に高くなります。

【表】PSA値と前立腺針生検法による前立腺癌検出率

PSA値 2〜4 4.01〜10 10.01以上
前立腺癌検出率 7% 30% 50%以上

(3)前立腺針生検

直腸診と血液検査(PSA)で前立腺癌が疑われるケースでは、経直腸的に超音波の監視下で癌が疑われる部位をピンポイントに狙って針を刺し、小量の組織を採取するのが前立腺針生検法です(図)。この採取された組織を用いて病理組織学的検査を行うことによって、初めて癌かどうかを診断することが可能となります。

【図】経直腸的超音波下前立腺針生検法

(4)画像診断CTと骨シンチグラフィー検査

組織診断で前立腺癌と診断されると次に転移の有無を調べます。CT や MRI検査にて癌の浸達度(臨床病期)とリンパ節転移の有無を、骨シンチグラフィー検査で骨転移の有無を調べます。

臨床病期分類

前立腺癌の進行度は、以下のように分類されます。
臨床病期B2までが、早期癌ということになります。

T-原発腫瘍

T1

触知不能、画像では診断不可能

T2

前立腺に限局する腫瘍

T3

被膜を超えて進展する腫瘍

T4

精嚢以外の隣接組織(膀胱頸部、外括約筋、直腸、肛門拳筋、または骨盤壁)に固定、または進展する腫瘍

TX

原発腫瘍の評価が不可能

TO

原発腫瘍を認めない

N-所属リンパ節

NX

所属リンパ節転移の評価が不可能

NO

所属リンパ節転移なし

N1

所属リンパ節転移あり

0.2cm以下の転移は“pN(mi)”と表記する。

M-遠隔転移

MX

遠隔転移の評価が不可能

MO

遠隔転移なし

M1

遠隔転移あり

M1a

所属リンパ節以外のリンパ節転移

M1b

骨転移

M1c

他の部位への転移

前立腺癌の治療

根治手術は大きな合併症がなく、70歳以下で前立腺内に限局した臨床病期がB以下の症例が適応になります。現在のところ根治手術が最も長期生存の得られるすぐれた治療法です。
前立腺癌に対する根治手術には恥骨後式前立腺摘除術、会陰式前立腺摘除術と腹腔鏡下前立腺摘除術があり、いずれも前立腺と精嚢腺のすべてを摘出し、尿道と膀胱を吻合するものです。術後の合併症としては一時的な尿失禁、インポテンス、尿道狭窄などが起こることがあります。

1.恥骨後式前立腺摘除術

この術式は天皇陛下にも施行されたように一般的におこなわれている下腹部を大きく切開する方法です。この到達経路では前立腺が非常に深い位置に存在することになるために、術者の手から手首まで挿入して 手術操作を行う必要があります(図)。
そのために、切開創が大きくなり、かつ、出血量も多く、疼痛など患者の負担は大きくなります。

2.腹腔鏡下前立腺摘除術 -ロボット支援前立腺全摘術-

現在米国では前立腺癌の手術の80%がロボット支援による腹腔鏡下前立腺全摘術が行われております。腹腔鏡手術は開腹手術に比べお腹を大きく切開しないために術後の疼痛が少なく、回復も早く、入院期間も短くなります。通常の腹腔鏡手術は2次元での操作のために奥行きのない、平面画像での操作となり、手術が難しい、また、糸を縫合する鉗子の先端は全く曲げられなくて制限が多い。通常の腹腔鏡手術比べるとロボット支援前立腺全摘術は3次元の世界で行うことができ、また、鉗子の動きが人間の手以上に正確に制限なく、自由に動かすことができることで手術を早く、正確に、安全に行うことができる最も進歩した方法です。関連病院の長久保病院では通常の腹腔鏡手術だけでなくこのロボット支援前立腺全摘術手術を受けることができます。

ホルモン療法

前立腺は男性ホルモンの影響をうけて成長し、男性ホルモンは前立腺肥大症や前立腺癌の発生に影響を与え、前立腺癌の増殖にも関係しているホルモンです。この男性ホルモンの分泌を低下させると前立腺癌細胞の増殖を抑えることができます。男性ホルモンを抑制する治療が前立腺癌に対するホルモン療法になります。

ホルモン療法の種類

  • A.

    除睾術(睾丸の摘出)

  • B.

    LH-RH アゴニスト(一ヶ月か3ヶ月に1回の注射)

  • C.

    非ステロイド性抗男性ホルモン剤

  • D.

    ステロイド性抗男性ホルモン剤

放射線療法

前立腺癌に対する放射線治療は効果が認められております。放射線治療は早期癌に対する根治的治療、手術後の切除断端が陽性の場合の補助と骨転移に対する疼痛除去を目的としたものに分類されます。

■根治的放射線治療

外照射 体外から照射する方法です。
強度変調放射線治療と重粒子線治療を勧めております。
内照射 小線源療法はラジオアイソトープを含有した金属を前立腺内に多数挿入し、前立腺全体をくまなく照射する方法です。
術後の補助療法 前立腺の根治手術後に癌細胞が残存しているとか、局所に再発した場合には放射線照射を勧めております。
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